平成24年度 こころのオルゴール

山笠を支えるもの

  • 分野: 人権全般 |
  • 朗読者:永淵 幸利|
  • RKBラジオ:2012年11月12日 |
  • FM福岡:2013年2月11日

 福岡市を代表する祭り、博多祇園山笠。この祭りの発展を支えてきた組織に、博多祇園山笠振興会があります。会長の瀧田喜代三(たきた・きよぞう)さんは、かつて事務局長を務めていた頃、山笠の歴史を新たにする出来事を経験しました。

 山笠期間中、それぞれの流れには、山笠の舁き手たちが出入りする詰所が設けられます。詰所には、十二年前まで一枚の看板が立て掛けられていました。そこに書かれていた言葉は、「不浄の者立ち入るべからず」。不浄の者とされたのは、喪中の人と女性でした。喪に服している人は黒不浄、女性は赤不浄と言われました。死を思わせる黒不浄と、血を連想させる赤不浄は、神様に奉納する祭りにふさわしくない、と考えられてきたのです。

 平成十一年、男女共同参画社会基本法が施行されると、「不浄の者立ち入るべからず」の看板は女性蔑視ではないか、という投書が数多く届くようになりました。博多祇園山笠振興会はこの声を真摯に受け止め、平成十四年、看板を外しました。その時の思いを瀧田さんはこう話します。

「私が若い頃、山を舁き終えて家に帰ると、ばあちゃんやおふくろが汗で汚れた締め込みや法被(はっぴ)、脚絆(きゃはん)を手で洗い、七輪を起こして乾かしてくれたものです。全部ワンセットしかなかったから、毎日洗って、乾かす。それが何ともうれしかったですね。そのおかげで私は気持ちよく山に出られたんですから。女性には感謝でいっぱい。穢れているとか、差別する気持ちはさらさらありません」。

 瀧田さんのように、山を舁く男たちは女性の支えのありがたみをよく知っています。
「子を産み育てる女性が不浄なはずがないでしょう。山笠は女性が支える祭りです。女性がいないと山は動かない。女性の支えがあるから男は安心して山を舁けるんです」と瀧田さんは力説します。

 山笠は七七一年にわたり受け継がれてきました。その歴史や伝統はとてつもなく重いものです。瀧田さんはその重みについてこう考えています。

「山笠は時代が求めるものを受け入れて来たから今日(こんにち)まで続いてきたのです。してはいけないことはしない、やるべきことはやる。そういう伝統を頑なに守り、凛としていることが山笠の一番の魅力だと思います」。

 期間中、山笠を見に訪れる人はおよそ三百万人。街を疾走する山が感動を呼ぶのは、山を舁く男たちの情熱と、それを支える女性たちの存在があるからではないでしょうか。

※複写、転写はご遠慮ください。

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